つぶやき前ちゃん

2024年06月06日 23:41

幼き頃、私というもの  その4
〈ギターとの出会い〉
中学の頃、兄貴が白いギターをどこからか借りてきた。今は亡き、藤圭子のレコードジャケットとかテレビジョッキーの景品とか、あの白いギターだ。片田舎の田植え唄とか祭りの神楽の音楽と演歌しかない世界に、白いギターである。兄貴も弾けないのに、ポロロンと親指でやるのだ。今まで、聞いたこともない。それはそれはもう、心が引寄せられたのだ。
でも、兄貴は、指一本触れさせてくれない。2、3日で、持主に返された。そこで私は、りんごの木箱をばらして、釘をフレット代わりにボンドで貼り付け、釣り糸のテグスを弦としてはり、糸巻きも胴もない指板だけのギター擬きをこしらえた。音も出ないコヤツに毎晩コードブックを手本に指を乗せ、こんな音かと目を閉じて想像にふけったのだ。今思えば、ずっとこのくらいの気持ちでギターにのめり込めば、今はもう少しマシな演奏ができたはず。
それから、しばらくして3年生の卒業式の謝恩会でバンドを組んで歌ったのである。その時のギターは、少年マガジンの後ろのページにある通販のトーマスというメーカーの変なギターだった。曲は、既に私のオリジナルであった。

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